まだ卒業設計に追われていない学部3年生の頃、たまたまオープンデスクに参加していた建築家の方に、スペインでの建築短期留学コースの案内を頂き、参加することにしました。

BAC(Barcelona Architecture Center)と呼ばれるバルセロナでの短期留学プログラムは、現地の建築家ミゲル・ロダン氏をディレクターに、日本人の建築学生を対象に開校されるプログラムです。
私が参加した回は、日本全国の大学から40名程度の大学生・大学院生が集い、数人のチームを組んで設計課題に取り組む一方で、現地の観光をしつつ、都市計画についても学ぶことのできる約1ヵ月のプログラムでした。

約1ヵ月間、現地のアパートを借りて暮らしながら留学をしていたため、その間に感じたたくさんのバルセロナ魅力を発信したいと思います。
記事にしたい内容が多すぎるので、多数の記事に分けて随時更新していきます!

目次

設計課題と敷地調査

同留学プログラムに参加している男女3人でチームを組んで設計課題に取り組むことになりました。
敷地は赤レンガ倉庫を含む現地の土地で、倉庫をコンバージョン(改修)した建築を提案するというものでした。
現場第一!ということで、早速現地調査へ!

コンバージョンの対象となる2階建ての赤レンガ倉庫は、かつては産業革新を支える紡績工場としての役割を担っていた歴史を持ち、平面形状は長手方向が約50mの細長い建物でした。
等間隔にガラス窓が配置されており、構造自体は古いものの、組積造の赤レンガの表面には味があり、そのまま外壁を活かせそうな感じもします。

また、倉庫の前には広場があり、広場を挟んで反対側には4階建ての同様の赤レンガ組積のギャラリー施設がありました。

倉庫内は、現在使われていないため物が散乱していますが、組積造を支える鉄骨のフレームを確認することができます。
等間隔の窓に合わせて鉄骨も等間隔で配置されており、窓2つを1つの単位として間仕切壁が計画されていることも確認できます。

建物確認と併せ、忘れてはならないのが周辺調査。
敷地周辺を歩いてみると、対象敷地の赤レンガ倉庫がこのエリアの紡績産業の核でありつつも、周辺にも同様の造りをした赤レンガの建物があることに気づきます。
道の構成にも特徴があり、工業地帯であった時代の石畳の道の上に、近年の住民の生活通路として整備されたであろう新しいアスファルトの道が交差しており、時代の変遷を感じ取ることができます。

Gigantes

現地住民の日常に使われるような建物計画にしようと、現地の伝統行事を内包できるような建物をイメージしており、そこで、現地の祭事で使われるGigantes(巨人の人形)について調査しました。

王や王妃を模した巨大人形は、そのフレームは木材で構成されており、肩の上に乗せて持ち上げる仕組みです。
持ち上げると高さは5m近くとなり、教会や屋外パレードにて使用されるのですが、祭事以外の時も屋内で保存・展示できる施設が必要なのではないかとも思いました。

Human Tower

Gigantesと同様に、現地の祭事で行われるHuman Tower(人間の塔)にも着目しました。
器械体操のような肩車レベルの塔もありますが、大広場で行う最大級の人間の塔は、なんと9段
10mを超える巨大な、まさに『塔』になるとのことで、現物は見れませんでしたが、写真で見ると驚愕です!

地域ごとにHuman Towerのチームを組成し、その高さを競い合うイベントであるため、地域ごとに練習場があり、大人や子供が日々練習しているところも見学できました。
しかし、やはり通常の建物の天高では練習に限度があります。

日常的に高いHuman Towerの練習ができるような、高さのある空間を内包する施設が必要なのではないかと感じました。

レンガ倉庫のコンバージョン

GigantesとHuman Towerの2つの地域の祭事の日常使い(展示・保存、練習場)のできる空間となるよう、2階レベルの床を抜いたり、現地の伝統工法であるリヴ・ヴォールトによる気積のある空間を実現する計画としました。

また、コンバージョンを行うにあたり、周辺の道路構成の分析から、南北、東西の人の動線が確保できるよう、細長い倉庫を均一のモジュールで区切り、各ボリュームをずらすようにしました。
ボリュームごとに壁・床・屋根の有無や素材を変化させ、それぞれについて設計することで、制作した模型も個々に分解することのできる、面白みを持たせた成果物としました。

実はこの成果物、ルーマニアの建築雑誌『Zeppelin』に掲載されております!!!

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