スペインに来たからには、スペインワインを飲まなければならない。
とりわけ、地中海にほど近いカタルーニャ地方は、古くからのワインの銘醸地として知られています。
バルセロナ中心地から少し離れますが、ワイン畑とワイナリーを求めてショートトリップに出ます!

目次

地中海性気候のブドウ畑

バルセロナから車で約1時間半、海沿いに進んでベル=ロック・ワイナリーBell-lloc)を目指します。
ワイナリーに近づくにつれ、山の起伏が感じられ、ブドウ畑らしい光景が目に入ります。
等間隔に植えられた木は、どれも同じ高さ、同じ枝の伸びになるように調整され、ワイン醸造用に大量に同規格で栽培されていることが分かります。

驚くのは、どの木も1mにも満たない樹高で、かなり低かったです。
その木々が、山の起伏に沿って大量に植えられています。

このブドウの木から採れたブドウが、これから向かうワイナリーで醸造され貯蔵されていると考えると、ワイナリー見学が楽しみになってきます…!

合成のような人面アート

写真を見て驚かれたであろう…
私も初見ではぞっとしました。

ワイナリー近くに車を止めたところで、その人面像はありました。
いたって自然な庭の中に、眼を瞑ったリアルな人間の顔。
近づいてみると、人の身長程の高さがあり、木を彫り出して造られたアート作品でした。

ワイナリーとは全く関係ないのですが、遊び心があり、人の心を(いろいろな意味で)動かす作品でした。

『ベル=ロック・ワイナリー』への誘い

ベル=ロック・ワイナリーの入口は突然現れます。
コールテン鋼によって囲まれた道に沿って進み、地形を活かした坂を下り、中の建築へと誘われます。

設計は、プリツカー賞の受賞でも知られる『RCR』による建築で、RCRの建築を見るために訪れたと言っても過言ではありません。

建築用語では「コールテン鋼」と呼ばれますが、一般的には「耐候性鋼」とも呼ばれ、あえて表面を錆びさせておくことで、中身の鋼の腐食を防ぐものです。
鋼の最大の弱点である錆を錆で防ぐ、という何とも独特な克服方法を用いていますが、茶系のザラザラとした質感で、独特の深みがあります。
RCRが得意とする建築の特徴でもあります。

中にはワイン醸造に使われるであろう装置が置かれており、外の自然を取り入れた景観を作り出しています。
郊外のワイン畑の中にあるだけあって、自然の音が地下にあるワイナリー建築の中へと、コールテン鋼の空間に反響しながら伝わってくる感じが、何とも言えない心地よさを覚えさせます。

自然に溶け込むワイナリー

人工的な素材であるはずのコールテン鋼が、意外にも自然である屋外の風景同化して馴染んでおりました。
やはり新品の鋼を使うより、年月が経ったように見えるコールテン鋼の方が、同じく長い年月をかけて形成された自然に馴染むのでしょうか。
興味深い…

ワイナリーは、ワイナリーとしての醸造や貯蔵のための空間だけでなく、プレゼンスペースや談話スペースなど、広くワイナリーを公開して見学してもらうための施設としての役割もあるようです。

ちなみに周辺に植えられている木は、なんとワインボトルの栓に使われるコルクの木です。

地下へと進むプロムナード

やはりワインの醸造・貯蔵のための空間は、一定の温度を保つことのできる地下空間にあるため、暗がりの地下空間へと進んでいきます。

同じコールテン鋼の壁面なのに、明るみで見るのと暗がりで見るのとは感じ方が全く異なり、落ち着きのある雰囲気を醸し出すと共に、少しの緊張も覚えます。

道は入口から一方通行のプロムナードになっており、この体験さえもRCRによって計画されているのかと思うと、順路の流れに身を任せるほかありません…

照らし出されるワイン貯蔵庫

外の光が入らい程真っ暗な空間まで進むと、目の前に白熱色の照明が道を示してくれます。


進んでいくと…

なんと大量のワイン樽が!!!
コールテン鋼の壁とワイン樽との間に照明を計画することで間接照明のようになり、ぼんやりと暖かい光が室内を照らします。
普通であればワインを貯蔵するだけの暗い空間であるはずの部分が、建築を通して見学者を呼び込み、魅力的な展示へと昇華させています。

ちなみに、ワインの貯蔵は一定の温度に保つ必要があるため、出入り口には扉があり、外気を入れないように短時間で開閉しないといけない構造となっていました。

貯蔵されているのは樽だけではなく、瓶詰め後のワインボトルも同様です。
コルクで栓をしたワインは、ボトルの状態でもさらに味を深めていきます。

これを見たからには買わなければいけない…
と衝動に駆られ、3本程お土産で購入しました(笑)

ここのワインの何が魅力的かと言うと、ボトルのネックの部分にコールテン鋼の装飾を施すというこだわり。
これは記念にほしくなりますよね。

通路は、傾斜のかかった壁面も組み合わせて構成されており、またその同規格・等間隔のコールテン鋼の間からは、建物を支える石組みが垣間見えます。

光を操る建築

暗がりの地下建築空間ではありますが、地上にトップライトを設けたり、壁面のコールテン鋼の間から屋外の自然光取り込むなどの工夫が見られ、所々で『光』を感じることができます。

暗いからこそ、屋外では当たり前の自然光の魅力を強く感じることができます。
また、時々刻々と移ろう太陽光は、建築の内部に有機的な変化を生み出していました。

ワイナリーの外では

外に出ると、ワイナリーの管理・運営、そしてワインの販売を行う家族の家がありました。
市街地から離れた山中の田舎の地域でも、生き生きと過ごしている家族や子供の姿は、見ていて微笑ましいですよね…

また、ワイナリーに地下に光を落とし込むための穴も見られました。
RCRの代表的な建築を見ることができ、満足なワイナリー見学でした!

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